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第298話 

「そうだよ」と遠藤西也は頷いた。「『美しい』に『咲く』と書く『美咲』だ」

「彼女の写真、見せてもらえないかな?」若子は興味津々で尋ねた。遠藤西也が一番好きな女性がどんな人なのか、とても気になっていた。

しかも、自分と少し似た性格だと言われたことで、ますます好奇心が膨らんでいた。

「彼女の写真はね……」と遠藤西也は一瞬考えたが、すぐに何かを思い出したように言った。「俺のスマホにあるんだけど、今日はうっかり家に置いてきてしまってね。だから、あなたのメッセージも電話も気づけなかったんだ」

彼の説明は自然で、疑う余地のない完璧な理由だった。

それに、彼が言っているのは本当のことだ。

今朝はあまりに急いでいたため、ついスマホを忘れてしまった。もし持ってきていたら、若子の電話にも必ず出たはずだ。

「そうだったのね」

若子は納得した様子で頷き、彼が出かけた時にはすでにメッセージを送っていたことを理解した。

「それじゃ、また次の機会に見せてもらうわね。でも、彼女を追いかけようとはしなかったの?それとも、もうアプローチしてみたけどダメだったの?」

「問題はね……」遠藤西也はため息をついて言った。「彼女には、彼氏がいたんだ」

「そうなの、彼女が既に恋人持ちだったのね」若子は、どういう顔をして彼に接すればいいか少し迷った。

気休めの言葉をかけるべきか、それとも本気で応援すべきか?

ただ、既に恋人がいる女性に対して、彼を応援して「奪う」ような立場に立つのはよくないと感じた。

「西也の気持ちは分かるわ。好きな人がいても、その人が自分のものじゃない時のつらさって」

まるで自分と修の関係を思い出すようだった。

すると遠藤西也は続けた。「でも、彼女は彼氏と別れたらしい」

「別れたの?」若子は心から遠藤西也のために喜び、「それなら、チャンスがあるじゃない!思い切ってアプローチしてみたら?」と励ました。

「ただ……彼女はまだ元彼のことを愛しているんだよ」

と遠藤西也は再びため息をついた。「こんな状態で、次の恋愛なんて受け入れられるわけないよ。考えてみてよ、若子。あなただって修と離婚したばかりだ。今、誰かがあなたに告白してきたとして、その気持ちを受け入れられる?」

「私は……」若子は首を横に振り、「私はそれを受け入れられないと思うけど、でも私がすべての女性の気持ち
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